思い出を磨く!
豊かな思い出は高齢者の財産
■令和元年の地方紙に五木寛之氏の「新・地図のない旅」が連載されていて、毎回楽しみに読んでいます。
5月18日付の第19回「私は古い物を捨てない」の内容は、私にとって、特に興味深いものでした。
■87歳の五木寛之氏は、最近、足が痛くて、あちこち歩き回るのがおっくうになり、本を読んだり、ぼんやり回想にふける時間が多くなったそうです。
思い出は、放っておくと錆びついてくる
しかし、一つだけ若者に負けない能力がある。
それは山のように沢山の思い出を持っていることだ。
豊かな思い出は高齢者の財産である。
(中略)
午後の日ざしの中で、古い映画のようにさまざまな映像が脳裏によみがえる。
誰にも迷惑をかけない至福の時間だ。
思い出のつまった引き出しは、放っておくと錆びついてくる。
しかし、くり返し開けたり閉めたりしているといつどんな時でも
楽に思い出を引き出すことが出来るようになるはずだ。
(中略)
アルツハイマー病の予防のためにも、思い出を磨くことは大切なのである。
モノから思い出が引き出される
■家の中の古い物は、心の奥底に眠っているもを引っ張り出すためのモノなので、ゴミ屋敷になっても断捨離はしないと書いていらっしゃいました。
■私も、このブログを書くためにこれまでの旅の写真を整理したり、
押し花、刺繍、パッチワーク、切り絵、編み物、折り紙、洋裁など
これまで好きで続けてきたことや、自分の手仕事を振り返ったりしましています。
思い出を磨くという至福の時間
■一つのモノから 色々なことが思い出されます。
例えば、何種類ものハーブを刺繍したランチョンマット・・・。
結婚して、慣れない土地での新しい生活の中で、友達作りにと通い始めた刺繍教室とハーブ教室。
集う仲間の笑顔や楽しい会話が蘇ってきます。
30年経っても、親しくお付き合いの続いている人、季節のハガキでつながっている人、名前と顔が思い出せる人、名前が思い出せない人・・・、
あぁ、でも、こうしてランチョンマットを手にすると、スッと、若いあの頃の帰って行けます。
■旅の写真もそうです。
壁に飾ったオーストリアのハルシュタットの写真。
2015年に訪れて、その美しさに魅了され購入したカレンダー。
その後も、切り取ってフォトフレームに入れ、毎日、あの日のことを思い出しています。
これまで訪ねた国内外の美しい街の中でもとびっきりの美しさでした。
家々の窓辺には、色とりどりのフラワーハンギングバスケットがゆれ、キラキラ光る湖面には、 三角屋根の教会と美しい街並みが映っていました。
教会の鐘の音が響き渡ります。
写真を見ると、あの日に帰れる。
あの日の主人の笑顔や会話まで蘇ります。
■年齢を重ねると、行動範囲も狭くなり、出会う人も少なくなり、感動や刺激も若い時のようにはなくなってしまうのは、自然なことです。
でも、思い出は、年齢を重ねるほど増えていきます。
この思い出を磨くという至福の時間は、人生を閉じるその時まで続くということに気づかされた「思い出を磨く」という言葉。
これからの前向きに人生を生きていくための魔法の言葉、宝物との出合いでした。