季節と暮らし

絵手紙がとどけてくれるもの

■私の絵手紙との出合いは、三十年以上前、家庭教師をしていたお宅の多趣味な明るいおかあさんとの出会いからでした。全国の”絵手紙友の会”のメンバーの方から届いた絵手紙を見せて頂き感激しました。

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■一言で絵手紙と言っても、描く人によって実に様々です。「リンゴ」というひとつのものを描くにも、十人十色・・・上から見下ろしたリンゴ、下から見上げたリンゴ、横から見たリンゴ。

■ハガキの中心に描かれたリンゴ、ハガキには、収まりきれず一部分が描かれたりんご。1個だけ、2個並べて、カゴに入れて・・・。

■絵の具で、クレヨンで、色鉛筆で、切り絵で、はり絵で、版画で・・。

 どれもこれも、それぞれ個性的で素敵。そして、ひと言添えられた言葉に、またまた個性があふれています。全体をキュッとひきしめる手作りの名前の印かんもしっかり自己主張しています。

■家庭教師後のお茶の時間に、度々、見せて頂き度に「私もいつかこんな素敵な仲間と絵手紙の交流がしてみたい」と思っていました。

■その後、結婚し新しい土地での生活が始まったある日、絵手紙を紹介して下さった家庭教師先のおかあさんから、絵手紙が届いたのです。

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 ハガキには、家庭教師をしていた中学生の姉妹の、年の離れた妹ともこちゃんが色鉛筆で描いてくれたというウエディングドレス姿の私。あの時の感激が、よみがえります。

■うれしくて、初めての絵手紙を描いて、返事を出しました。それから、3ヶ月位、お互いに10通ほど絵手紙のやりとりを経て、念願叶って、「絵手紙友の会」のメンバーになり、全国の会員の皆さんとの交流が始まりました。主人の両親や実家の両親にも、時々、下手な絵手紙を送りました。

 知らない土地で知り合いもいない・・でも・・バイクの音が聞こえると、我が家の郵便受けからカタンッと音がします。「今日も、届いた!」大切な友達を迎えるような気持ちです。

■ほぼ、毎日、絵手紙が届きます。そして、ほぼ、毎日、絵手紙のことを考えています。何を書こうか?どうしたら上手に描けるようになるのか?

 どんな言葉を添えたらいいのか?・・・全国から素敵な絵手紙が毎日届くのに、私はなかなか上達しません。会長の小池邦夫先生からも必ず返事の絵手紙が届きます。そして「下手でいい、下手がいい」と励まして下さいます。友の会の仲間も、ゆっくり優しく待って下さいます。

■調理するために買ってきた野菜や果物、道ばたの野の花、自転車で少し遠出をして、時には風景・・・下手なりに心を込めて描きました。

■行ったこともない町に、私の絵手紙が届く・・、会ったこともない方からの絵手紙なのに顔が見えるような気がする・・、不思議な見えない糸でつながる温かい縁。つながった方達と旅行先でお会いすることもありますし、一緒に旅をしたこともあります。

■その後、仕事を始めて忙しくなり、友の会から離れることになりましたが、絵手紙は細々と続けてきました。

■父が認知症となり、落ち込む母を励まそうと、また、時々絵手紙を描き始めました。その後、父が介護施設に入所してからは、父に向けて描いています。認知症を発症して7年、父は、体は元気で身の回りのことは何でも一人で出来ますが、たった今、食べた食事のことも忘れてしまいます。

 そんな父は、今、目の前に見える世界だけで生きているといった感じです。今を精一杯生きている父に、喜んでもらうために何が出来るのか・・。

■父を訪ねるといつも上機嫌で、一緒に歌を歌ったり、写真を見ながら、昔の懐かしい話をして過ごします。いつも「お父さん、またね」と握手をして帰る私に、「ありがとう」と合掌して見送る父・・・でも5分もするとすっかり忘れてしまう父です。

■そこで、絵手紙を送ることにしました。父に話しかけるように、絵手紙を描いています。私が父を訪ねている時に、私の絵手紙が届いたことがありました。職員の方が、「◯◯さん、手紙が届きましたよ」と笑顔で手渡されると、「あら!誰からだろか?」ニコニコ受け取り、絵を見たり、手紙を声に出して読んだり。絵手紙だったら、ハガキホルダーに入れておけば、何回でも見ることが出来ます。一粒で二度美味しいどころか、目にする度に美味しいのでは・・!

■父に絵手紙を描くようになって感じることは、絵手紙を描くことが、私自身の癒やしになっているということです。認知症になっても、私を幸せにしてくれる優しい父です。お父さん、ありがとう。離れていても、目の前に父を感じながら、絵を描き、父の心に響くような言葉を添え、手紙を書きます。

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ABOUT ME
かな
好きなこと:手仕事・読書・旅・映画   憧れる人:ターシャ・テューダー     一番欲しいもの:自分の時間