ポイント① 本人が、心配を口に出すようになった時
目次
年齢を重ねると、誰もが、日常生活の中で、物忘れが多くなり、「認知症では?」と心配に
なるものです。自分自身がそれを自覚している場合は、認知症の心配を自ら口にしますか
ら、心療内科の受診を促すことが出来ますが、本人にその自覚がない場合、家族は受診をど
のタイミングで、どう促したら良いかと悩むものです。
日常の穏やかな雰囲気の時に、
本人から
「最近、おかしい・・・」
「最近、忘れっぽい・・・」
「思い出せない・・・」
・・・そんな言葉が出た時が受診を勧めるタイミングです。
ポイント② 本人の不安な気持ちをしっかりと聞くこと
本人が、日頃の不安を口に出したら、しっかりと聞いてあげることが、まず大切です。
物忘れの不安を口にするのは、勇気のいることです。あなたに心を許して、打ち明けている
のですから、意見を言わずに、しっかりと思いを聞いてあげることです。
直ぐに、受診を勧めずに
「あら、そうなの?」
「どんな時に、おかしいと思うの?」
「どんなことを忘れるの?」
まずは、顔を見ながら、不安な気持ちをオウム返しで聞いてあげることです。
「そうなのぉ?それは心配だね」
「あらぁ、それは不安だね」
と、しっかり聞いてあげた上で、
「年齢を重ねたら、誰でも、物忘れもするよね」
「私の知り合いの○○さんも、同じようなことを言ってたよ」
「最近は、忘れっぽくなった時によく効く薬が出ているんですって」
「早ければ早いほどよく効くんだってよ」
・・・目を合わせて、優しく、さりげなく言ってみましょう。
「一緒に、病院に行ってみようか?」
不安な気持ちを聞いてもらって安心した分、
あなたとの信頼関係が結ばれ、あなたの話を聞くゆとりが出来ています。
「へぇ、物忘れに効く薬があるのか・・・」
「病院に行ってみようか・・・」
「一緒に行ってくれないか」
そんな言葉がきっと聞けると思います。
本人が不安な気持ちを口に出した時に、
じっくり聞いて聞いてあげること、
急がせないことが大切です。
ポイント③ チームになって、みんなで取り組むこと
本人の認知症を、本人以上に心配しているのは、身近な家族です。
日頃から、忘れっぽくなり、同じことを何度も聞いたり、一人での留守番が難しく
なったりと、身近な家族は、不安やイライラでストレスがたまりがちです。
「さっき、言ったでしょ」
「もう、食べたでしょ」
「もう、何度も同じことばっかり言って」
たとえ、口には出さなくても
本人は、それを、目ざとく感じ取って、傷ついたり、怒ったりします。
他人なら気づかないのですが、身近な家族の態度や表情に、とても敏感です。
時々、訪ねる人の前では、
家族がびっくりするほどしっかりしていることが多いのです。
「おお、今日は調子いいね!」と喜んであげられるのは、まだ余裕がある時。
「いつもは、そうじゃないでしょ」と思ってしまったり・・・。
身近な家族は、そんな日常の不安やイライラで、疲れています。
身近な家族の不安や愚痴を聞く人の存在が必要です。
話を聞いて共感したり、日頃の苦労をねぎらったり、感謝を伝えたり・・・。
一人で抱え込まず、家族だけで抱え込まず、家族以外の子ども、孫、兄弟、親戚、
友達、ご近所さん・・・みんなで取り組む、みんなで支えることが、一番大切です。
そのきっかけになるのが、病院の受診、専門機関の介護認定でもあるのです。
ポイント④ 受診を勧めるのは、家族でなくても良い
家族は、日頃から、本人の行動を身近に見て、本人同様に、心配しながら生活を共にしてい
ますから、心配なあまり、受診を強く勧めてしまいがちです。受診を勧める材料は沢山持ち
合わせていますから、ついつい、本人の忘れっぽい日常を、あれもこれもと口にして、本人
のプライドを傷つけてしまったり、不安を増長させてしまいがちです。確かに、心配するが
故の愛情表現なのですが、感情的になってしまっては、受診のタイミングを逃してしまいま
す。
受診を勧める人は、ちょっと冷静になれる、家族以外の人が良い場合もあります。
<私の場合>
両親と暮らす弟から相談がありました。
「農作業に出かける度に、道具をなくして帰ってくる」
「家族の留守中に、電話があったり人が訪ねてきても忘れている」
「専門の病院を受診した方がいいと思うけど、俺から言っても、絶対に怒り出すと
思うから、うまく話して欲しい」
私も、父を受診させるのは大変だろうなぁ・・と思いました。
でも、すんなりと、直ぐに、受け入れてくれたのです。
ポイント⑤ リラックスした雰囲気の時に、さりげなく伝える
普段からコミュニケーションをとって、本人の興味や関心を知っておくことが大切だと思い
ます。父は、スポーツや魚釣りが趣味でした。同居する孫達とキャッチボールをしたり、自
転車乗りを教えたり、塾やスイミングスクールの送り迎えをしたりと、ずっと孫育てにも積
極的でした。弟から相談を受けて程なく、両親を誘って、父が可愛がっている孫の野球の応
援に一緒に出かけました。試合と試合との間のリラックスした雰囲気の中、受診を促すチャ
ンスがやってきました。父は「最近、おかしい・・・」と、自分の物忘れの不安をいつものよ
うに口にしました。私は、ポイント②のように、共感しながらしっかり聞いて、父の上機嫌
な様子を見計らって、受診を促してみたのです。受診を勧める時には、和やかなリラックス
した雰囲気であることが大切です。