ことばの力

「認知症かも?」スムーズな受診の5つのポイント

ポイント① 本人が、心配を口に出すようになった時

年齢を重ねると、誰もが、日常生活の中で、物忘れが多くなり、「認知症では?」と心配に

なるものです。自分自身がそれを自覚している場合は、認知症の心配を自ら口にしますか

ら、心療内科の受診を促すことが出来ますが、本人にその自覚がない場合、家族は受診をど

のタイミングで、どう促したら良いかと悩むものです。

日常の穏やかな雰囲気の時に、

本人から

「最近、おかしい・・・」

「最近、忘れっぽい・・・」

「思い出せない・・・」

・・・そんな言葉が出た時が受診を勧めるタイミングです。

ポイント② 本人の不安な気持ちをしっかりと聞くこと

本人が、日頃の不安を口に出したら、しっかりと聞いてあげることが、まず大切です。

物忘れの不安を口にするのは、勇気のいることです。あなたに心を許して、打ち明けている

のですから、意見を言わずに、しっかりと思いを聞いてあげることです。

直ぐに、受診を勧めずに

「あら、そうなの?」

「どんな時に、おかしいと思うの?」

「どんなことを忘れるの?」

まずは、顔を見ながら、不安な気持ちをオウム返しで聞いてあげることです。

「そうなのぉ?それは心配だね」

「あらぁ、それは不安だね」

と、しっかり聞いてあげた上で、

「年齢を重ねたら、誰でも、物忘れもするよね」

「私の知り合いの○○さんも、同じようなことを言ってたよ」

「最近は、忘れっぽくなった時によく効く薬が出ているんですって」

「早ければ早いほどよく効くんだってよ」

・・・目を合わせて、優しく、さりげなく言ってみましょう。

「一緒に、病院に行ってみようか?」

不安な気持ちを聞いてもらって安心した分、

あなたとの信頼関係が結ばれ、あなたの話を聞くゆとりが出来ています。

「へぇ、物忘れに効く薬があるのか・・・」

「病院に行ってみようか・・・」

「一緒に行ってくれないか」

そんな言葉がきっと聞けると思います。

本人が不安な気持ちを口に出した時に、

じっくり聞いて聞いてあげること、

急がせないことが大切です。

ポイント③ チームになって、みんなで取り組むこと

本人の認知症を、本人以上に心配しているのは、身近な家族です。

日頃から、忘れっぽくなり、同じことを何度も聞いたり、一人での留守番が難しく

なったりと、身近な家族は、不安やイライラでストレスがたまりがちです。

「さっき、言ったでしょ」

「もう、食べたでしょ」

「もう、何度も同じことばっかり言って」

たとえ、口には出さなくても

本人は、それを、目ざとく感じ取って、傷ついたり、怒ったりします。

他人なら気づかないのですが、身近な家族の態度や表情に、とても敏感です。

時々、訪ねる人の前では、

家族がびっくりするほどしっかりしていることが多いのです。

「おお、今日は調子いいね!」と喜んであげられるのは、まだ余裕がある時。

「いつもは、そうじゃないでしょ」と思ってしまったり・・・。

身近な家族は、そんな日常の不安やイライラで、疲れています。

身近な家族の不安や愚痴を聞く人の存在が必要です。

話を聞いて共感したり、日頃の苦労をねぎらったり、感謝を伝えたり・・・。

一人で抱え込まず、家族だけで抱え込まず、家族以外の子ども、孫、兄弟、親戚、

友達、ご近所さん・・・みんなで取り組む、みんなで支えることが、一番大切です。

そのきっかけになるのが、病院の受診、専門機関の介護認定でもあるのです。

ポイント④ 受診を勧めるのは、家族でなくても良い

家族は、日頃から、本人の行動を身近に見て、本人同様に、心配しながら生活を共にしてい

ますから、心配なあまり、受診を強く勧めてしまいがちです。受診を勧める材料は沢山持ち

合わせていますから、ついつい、本人の忘れっぽい日常を、あれもこれもと口にして、本人

のプライドを傷つけてしまったり、不安を増長させてしまいがちです。確かに、心配するが

故の愛情表現なのですが、感情的になってしまっては、受診のタイミングを逃してしまいま

す。

受診を勧める人は、ちょっと冷静になれる、家族以外の人が良い場合もあります。

<私の場合>

両親と暮らす弟から相談がありました。

「農作業に出かける度に、道具をなくして帰ってくる」

「家族の留守中に、電話があったり人が訪ねてきても忘れている」

「専門の病院を受診した方がいいと思うけど、俺から言っても、絶対に怒り出すと

思うから、うまく話して欲しい」

 私も、父を受診させるのは大変だろうなぁ・・と思いました。

 でも、すんなりと、直ぐに、受け入れてくれたのです。

ポイント⑤ リラックスした雰囲気の時に、さりげなく伝える

普段からコミュニケーションをとって、本人の興味や関心を知っておくことが大切だと思い

ます。父は、スポーツや魚釣りが趣味でした。同居する孫達とキャッチボールをしたり、自

転車乗りを教えたり、塾やスイミングスクールの送り迎えをしたりと、ずっと孫育てにも積

極的でした。弟から相談を受けて程なく、両親を誘って、父が可愛がっている孫の野球の応

援に一緒に出かけました。試合と試合との間のリラックスした雰囲気の中、受診を促すチャ

ンスがやってきました。父は「最近、おかしい・・・」と、自分の物忘れの不安をいつものよ

うに口にしました。私は、ポイント②のように、共感しながらしっかり聞いて、父の上機嫌

な様子を見計らって、受診を促してみたのです。受診を勧める時には、和やかなリラックス

した雰囲気であることが大切です。

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かな
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