図書室の彩り

8月の学校図書館ー金原瑞人・藤井輝明氏の講演会

学校図書館設営ー夏の講演会にて

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■夏休みは、著名人の講演を聴きたいものです。今回は、金原瑞人(かねはらみずひと)氏の講演会と藤井輝明(ふじいてるあき)氏の講演会の記録です。

金原瑞人氏の講演会

 

■金原端人氏は、絵本、児童書、ヤングアダルト小説、一般書、フィクション、ノンフィクションまで広いジャンルの翻訳を手がけ、その翻訳冊数は、180冊以上にもなるそうです。

私が読んだ本では「バーティミアス サマルカンドの秘宝」(理論社)、「レイチェルと滅びの呪文」(理論社)のシリーズ、「カナリーズ・ソング」(金の星社)、「青空のむこう」(求龍堂)などがそうでした。

  

 
氏の長女は、「蛇にピアス」で芥川賞を受賞した金原ひとみ氏です。

午前の演題は「翻訳のことば、ことばの翻訳」ということで、翻訳する上での苦労話などを語られました。

「最近ほとんどの文章が横書きで書かれているのに、日本に横書きの小説は、ほとんどない。

中国でさえ横書きにかわりつつあるというのに、なぜ縦書きにこだわるのだろう。

理由は、長年の縦書きの文化という”慣れの問題”と横書きは売れないという”ジンクスの問題”」

とおっしゃいましたが、確かにそうですね。

横書きの小説って、ちょっと違和感がありますね。

縦書きの場合、進行方向は左ですが、横書きの場合、進行方向は右になります。

挿絵がある場合、挿絵を入れるページによっては、絵を反転させることもあるそうです。

目的地は、進行方向にあるべきですが、縦書きと横書きで進行方向が反対になるため、目的地が進行方向の反対にきてしまうことがあるからです。

反転させると右と左が反対になってしまいますから、原文をそのまま翻訳すると挿絵と合わなくなることもあるので挿絵に合わせて翻訳することもあるということでした。

たとえば、原文では「女は、右の耳にピアスをつけ・・・」となっていても、進行方向の関係で挿絵を反転させると左の耳にピアスがきてしまうので「女は、片方の耳にピアスをつけ・・・」と訳すことのあるそうなのです。

なるほど・・・といった感じです。

翻訳されることを考えて、絵本作家はほとんど初めから横書きで書くそうです。

確かに、絵本は民話や昔話の他は、ほとんど横書きですよね。おもしろい!

「日本語は、とても気をつかう言葉。

無色透明のI (アイ)とYou(ユウ)を訳すのが非常にむずかしい。

男ことば、女ことば、おじいちゃんことば、子どもことばなどの違いは

”~だよね。”などの終助詞を使って表現する。

「欧米の翻訳作家の地位は、低く表紙に名前は載らない」

などのお話も興味深かったです。

自分で読んでみておもしろかった本を翻訳して出版社に持ち込むことが多く、現在70%弱、以前は80%は、持ち込んでいたそうです。

よく外国におもしろい本を見つけに行くそうで、読んだ本の20~30冊に1冊くらいの割合で翻訳するるそうです。

午後の演題は「私の非読書体験」ということで、子ども時代から現在に至るまでのご自身の読書体験や二人のお子さんの読書の様子について語られました。

ご自身は、小学生の頃までほとんど読書の体験がなく、外を遊び回っていて学校の図書館には行ったことがなかったということです。

マンガやテレビアニメが大好きだったそうです。中学生になってから読書に目覚めたそうです。

本は、おもしろいし、おもしろかった本の話なんかをすると女の子にもモテるので一石二鳥という感じだったと

ユーモアを交えて話されました。

ご長女(金原ひとみ氏)は、幼い時あまり本を読まなかったが、不登校の時代に何もすることがなかったからか、本を読みあさるようになり父親の金原氏が教えていらっしゃる大学の研究室に顔を出すようになり、現役の大学生と一緒に小説を書くようになったたそうです。

ご長男は、小学生の頃までよく本を読んでいたが、現在は漫画家をされているとのこと。

情操の面では、幼い頃の読み聞かせや読書は大切だけれど、大人になってからの読書に幼い頃の読書体験は、ほとんど影響はないのでは・・・とおっしゃいました。

大学助教授で翻訳作家という肩書とは裏腹に、Tシャツにジーンズというラフな格好がよく似合う若々しい方で、学生の中にいたら同化して先生だとは気づかれないだろうといった感じです。

お話の内容も興味深く話し上手(大学の先生の話は、あまりおもしろくないものですが・・・)、また、優しく気取らないラフな話し方が好印象の方でした。

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藤井輝明氏の講演会

 

■藤井輝明氏は、熊本大学医学部教授。2003年に『運命の顔』(草思社)を出版し、話題となり、全国で講演活動をさせています。

当日は、熊本大学黒髪キャンパス内の「くすの木会館」で学校図書館司書、図書主任、養護教諭、人権教育担当教諭の参加がありました。

藤井先生は、2才の時に海綿状血管腫という病気を発病、右顔面が膨れ上がり、幼い頃から様々ないじめに合いました。

顔につばを吐きかけられた事も100回をこえるだろうと・・・。

そんな屈辱的な体験をした人がどれ位いるでしょう。想像する事すら難しいことですよね。

でも、先生は数限りないご自身の差別、偏見、蔑視の体験をにこやかに淡々と話されます。

普通だったら、そんな屈辱的な体験を口にすれば、相手に対する怒りが込み上げてきて、つい感情的になるものではないでしょうか。

でも、先生は、全てを善哉善哉(ぜんざいぜんざい)と丸ごと受け止めたお釈迦様のような穏やかな表情で、まるでつばを吐きかけた相手を哀れむように優しく話されます。

先生の講演の中で何回となく口にされた「感謝」そして「役割」、この二つが先生の前向きな人生のキーワードだと感じました。

キーポイント① 感謝

■まず、藤井先生は、血管腫を”先生””宝物””トレードマーク”と言います。

血管腫という病気のおかげで色々な出会いがあり、気づきがあり、強い精神力を身につける事ができ、現在の自分があるとおっしゃるのです。

もし、血管腫を発病してなかったら・・・と思うとゾッとするとまで。

血管腫という、一見不都合と思われることが、”教え導き” ”幸せをもたらし” ”チャンスをつれてきた”ということでしょうか。

先生は、”逃げる”ということをしなかった。

与えられた試練を真正面から受け止め、辛さ、悔しさ、苦しさをバネにして努力を重ねた結果、試練の日々が、宝となったということでしょう。

「現在が幸せなら過去の辛い体験も幸せな思い出と感じられる、現在が不幸なら過去の幸せな体験でさえも良い思い出と感じられない」と言いますが、先生は、今、お幸せなんですね。

「感謝の心は幸せを連れてくる」とも言います。

現在が幸せならば、過去を幸せにし、未来の幸せも引きよせるということでしょう。

そして、この「幸せ」というものは、目に見えるものでなく心が感じるものですから、感謝が出来れば、誰でも「幸せ」を手にすることができるということですね。

与えられた条件の中で、いつも感謝して暮らせる心が欲しいものです。

また、先生は、側で支えてくださったご両親、恩師、友だちに感謝されます。

感謝の心を忘れず努力していれば、必要な人やチャンスは自ずと与えれれるということですね。

キーポイント② 役割 

「私は喜んで総合学習や人権学習の生きた教材になりますよ。時間の許す限り、いつでもどこへでも行きます。それは、私に与えられた役割だと思っています。」

とおっしゃいます。

この講演の10分間の休憩時間に4校への講演会が決まりました。

先生の差別、偏見、蔑視の体験は、私たちの想像をはるかに超えたものなのに、先生のお人柄からでしょうか、講演会は終始和やかで、そこにいる全ての人が勇気や元気をもらえるのです。

「私にできることは何かしら?」

「私に与えられた役割ってなにかしら?」

「私にも何かできるかもしれない。」

前向きになれるこんな素敵なお話を他の人にも聞いてほしい、感受性豊かな子ども達にこの素敵な先生に出会わせてあげたい、と講演を聞かせていただいた全ての人が思ったのではないかと思います。

最後に次のような先生の言葉をご紹介して終わりたいと思います。いつでも心に刻んでおきたいと思います。

「今の自分」が、自分の全てだと思ったら、大きな間違いである。

「人間は変わるものである」からだ。

将来大きく成長する自分がいる。

「想像力」「創造力」が人間らしく生きるために重要である。

いろんな困難にぶつかった時、どう乗り越えていくか。

それも想像力(創造力)である。

想像力(創造力)があれば、夢と希望が持ち続けられる。

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かな
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